太った中年

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偽りの愛

2000年の春、地元に新しいフィリピンパブがオープンした。

フィリピンパブ・オーナーの友人に誘われてそのお店に行った。ただ当時、5年間交際していた子持ちの日系ブラジル人と別れて間もない頃で外人パブへ行くことに乗り気ではなかった。しかし友人から「美人揃いで話題の店だから、1セットだけ付き合ってくれ」と言われ、しぶしぶ応諾した。

お店に入ると友人はさっそくお気に入りのタレントを指名、ついでに以前クドイてフラれたタレントも指名、その子が横に座った。彼女は初来日の新人タレントだったから日本語がまだよくわからないので話をすることもなく、タガログ語の上手な友人が通訳の係をした。しかし、そもそもフィリピンパブ自体に興味がなく、会話もできないから面白くもナンともなかった。

友人は奥さんがフィリピーナでフィリピンパブを経営しているくらいだから重度のフィリピン中毒だ。結局、そのお店には友人がお気に入りのタレントにフラれるまで週一のペースで通うことになった。フィリピンパブに興味のない人と一緒に行くことで友人は奥さんにうまい言い訳をしたのだろう。

お店に行けばいつも同じパターンの指名だからいつも新人タレントの彼女が横に座った。驚いたのはお店へ通うごと、彼女はみるみるうちに日本語が上手になっていった。だからこちらも夜のタガログ語を学習した。こうして日本男児はフィリピンパブにハマってフィリピン中毒になっていくのである。

当時のタレントは興行ビザで来日していて半年に一度帰国しなければならない。そして新しいフィリピンパブで横に座った新人タレントとは恋愛関係になっていて彼女も出会ってから半年後帰国するときが来た。彼女から親に会ってほしいと言われ、どうしたものかフィリピン中毒の友人に相談した。

「彼女は新人だからオマエのケースなら大丈夫だろう。相手がベテランだと騙されて追っ掛けカモになる。逆にオレのようなタガログ語ペラペラのベテランだと相手が警戒してダメだ。ベテランなんかになるものじゃない、トホホ」

なんだかワケのわからない説明だけど2度目のフィリピン旅行になった。

これから先の話はいろいろなことを思い出して筆が進まないからトリップして彼女との別れ話。2005年に興行ビザが廃止されて彼女はフィリピンパブの仕事が最後になった。そして、帰国前彼女から思わぬことを聞かされた。

「本当の名前は違う」

最初は何のことなのかわからなかった。

よく聞けばつまり、彼女は新人タレントで初来日する際、パスポートを不正に取得していた。18歳以上でないと入国できないが、彼女は17歳で来日していた。年齢も5歳偽っていた。青天の霹靂とは正にこのことなのだ。

「5年間、偽りの名を語り、騙していたのか・・・」

かくして偽りの愛は終焉した。

written by bibbly
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